「断片的なものの社会学」という社会学者、岸政彦氏の本を読んだ。

「断片的なものの社会学」という社会学者、岸政彦氏の本を読んだ。

たいへん興味深い。

人々の話を聞いて回るフィールドワークをしているなかでのエピソードが書かれているが、それは一篇の短編小説のような味わいがある。

話を聞く人々は、比較的、社会的な弱者の場合が多いようで、そこには普通の生活では知り得ない事実がある。

それも興味深いが、著者の心のうごき、視線のやさしさ、などが垣間見えるところが一番、読んでいて感心するところである。

 

なかでも「幸せのイメージ」に関する話は身につまされる。

一部、112ページから抜粋しよう。

 

「要するに、良いものと悪いものとを分ける規範をすべて捨てる、ということだ。規範というものは、かならずそこから排除される人々を生みだしてしまうからだ。

 しかし同時に、私たちの小さな、断片的な人生の、ささやかな幸せというものは、そうした規範、あるいは「良いもの」でできている。私たちには、この小さな良いものをすべて手放すことは、とてもとても難しい」

 

ある人の幸せが、ある人にとっては、ときには一種の暴力となることがあることを、我々は無意識に知っている。

だが、ときには、それを無視している生きている。

その程度をどの程度にするべきか、その線引きはとても難しい。

この辺りの視線があることが、この本の面白さなのだろう。

 

それから、ときどきでてくる画家や音楽家などが面白い

ヘンリー・ダーガー

エリック・ドルフィー

小川さやか 「都市を生きぬくための狡知

ヤン・ヨンヒ 映画「かぞくのくに」

ル=グウィン 「素晴らしいアレキサンダーと、空飛び猫たち」

なんだか気になるところが多いのである。